冷たい家

3月26日。

祖父とともに、老人ホームから出雲の家に戻った。

玄関を入ると、とても冷たく、こんなは事は初めてだった。

〈図1 2019年3月26日撮影〉

知り合いにあげた植木はつぼみを付けているそうだが、

出雲の家の植木は地植えのもの以外すべて枯れた。

カレンダーが昨年の1月で止まっている…

今の老人ホームに移ったのが昨年の1月20日だった。

祖父は老人ホームには行きたくなかったはずだ。

およそ6、7年前に祖母が亡くなってから、祖父は一人で身の回りの事をしてきた。

また、週に4回ヘルパーの方が来て食事を作って下さっていた。

心臓が悪く、足や腕に痛みはあったがそれ以外には問題がなかった。

しかし、実父や叔母、大叔母(亡くなった祖母の妹。今は福井にいるらしい)は老人ホームに入居する事を勧めていたそうだ。

一昨年の12月、私が祖父の家に遊びに行った時の事。

叔母が老人ホームの書類を祖父に見せに来て、

祖父は「入ってもいいかな…」とポツリとつぶやいた。

そして叔母は「やっぱり(入居しても)いいよね?」と言って、ケアマネージャーと老人ホームに連絡、入居の手続きを進めていった。

祖父が何となく呟いたところに、叔母がどんどん推し進めていった様な印象があった。

祖父自身はあまり気が進まない顔をしていた。

私もいけなかった。

「祖父はこれまで1人で何でもしてきている。それにヘルパーさんが来ているから、入居しなくても大丈夫なのでは」と言えばよかったのだ。

突然の事で、私はどうしていいのか分からなかった。

祖父と出雲の家では掃除をした。

私は履き掃除をして、祖父はガラス窓に水をかけて洗い流した。

時計は電池が切れて時間が止まっていた。

私たちが家に入り、エアコンをつけて、なんとか暖かくなったが、

家には人が入らないと、空気も何もかも動かないのだな。

ママハハからは教えて頂いていたけど…

出雲の家で、私はアイちゃんの事を思い出していた。

私は卒業論文が終わらず、ママハハとアイちゃんやキーちゃん達が付きっ切りでそばにいた。

それによって、ママハハ達は本来の家に帰れずにいた。

「おじいちゃんと家に帰った方がいいよ。アイが帰りたかった様に、

多分、家に戻りたいと思うから」とママハハが言ってくれた。

「やっぱり家にいた方が気が楽だわ」と祖父。

ママハハの言うとおりだった。

私はママハハ達が帰れる様には出来なかった。

アイちゃん、ごめんなさい。

また、祖父の家には戻りたいと思う。

そして、ママハハとアイちゃん達が家に戻れるように、

私が出来る事を頑張らなければ…

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